ポジショニングについての私の考え方

遠江(とおのえ)です。

◆業界の常識を疑う

よく「起業するときはポジショニングがいちばん大事」という声を聞きます。

「ポジショニング」というのは、自分の立ち位置のことで、いうなれば差別化戦略のことです。USP(ユニーク・セリング・プロポジション)と言ってもいいです。

つまり、「自分にはこんなユニークさがありますよ」とアピールして、他と競合しない位置に立とう、というのが大元の考え方で、それをいろんな人がいろんな言い方をしているだけと理解しておくとよいでしょう。

それを「ブルーオーシャン戦略」と名付けてベストセラーを取った、中国系のボスコン付きの経営学者もいましたが、言ってることは同じです。

「競合がうようよいる海で競争すると、サメの食い合いみたいに血まみれになる(レッドオーシャン)ので、自分にしかないオンリーワンのポジショニングを見つけて、競合のいない海(ブルーオーシャン)で戦いなさい」ということを言っています。

だから、すべての結論がどこに収斂するかというと、「起業するときにはポジショニングがいちばん大事」というところにみんな集まってくるのです。

「自分の立ち位置を決めないと、その後の戦略は立たないので、まず何を置いても自分のユニークさ(USP)を見つけて、ポジショニングするべきです」

「ポジショニングできなければ成功しない」こういうことを誰もが言うわけです。

ほんとうにそうでしょうか。

◆学者の理論

そもそもこの「ポジショニング」だとか「USP」「差別化戦略」「ブルーオーシャン戦略」などというのは、経営学者が後追いで考えた智慧です。

結論ありきで、あとから理論化したものばかり。

つまり、「成功者を見たらみんなそうやっていたので、これは普遍的な法則だ」というところまではいいのです。事実ですから。

ただ、学者たちはその成功者が駆け出しのときから「ポジショニングありき」でスタートしたから成功したかどうかは見ていないのです。

スティーブ・ショブズが駆け出しのとき、「自分はIT業界のなかでこんな競合のいないポジショニングを取って戦おう」などとは考えていないということです。

それは、アップルが大成功してみて、その成功要因を分析すると、他にないユニークなポジションで戦っていた、ということにしかすぎません。

つまり、これから起業する者への適切なアドバイスにはなりえていないのです。

それは、彼ら学者たちが、自分で起業していないことに起因しています。

私は経営論の本はかなり読みますが、全部を鵜呑みにしないのは、実際やった人の理論ではないことが多いからです。

実際やった人は理論化するのが不得手な人が多いですし、現役で戦っている人は、理論をまとめる時間もなければ、本当のミソをなかなか種明かししないのです。

ジョン・ロックフェラーも「成功の要因は『成功の秘訣を教えないこと』だ」(笑)と言っているぐらいですから。

◆閑話休題

だから、ごく稀に「実際成功している人が、その智慧を開陳しているもの」があればそれは多額のお金を払ってでもぜひ学んでおくべき宝になるわけです。

実際成功した人の本音の智慧は価値がものすごく高いのです。

ただ、そういう叩き上げの成功者は、体験談を語るのはうまいのですが、それを抽象化して普遍的な法則を導き出すのは不得意な方が多いので、自分の仕事に応用するときは翻訳が必要です。

松下幸之助さんがあの時代成功した智慧は、現代の私の仕事に持ってきたら、こう取り入れるべきだ、という翻訳です。

ここを間違うと、せっかくの成功者の智慧が生かせないどころか、間違った道を歩むことにもなりかねません。

ただ、本当にごく稀に、「実際成功している人が、その智慧を普遍的に原理化もできている」という例がありますので、これは正真正銘のお宝です。

私もそういうお宝を渉猟していますし、私自身もそうでありたいと願っています。

ちょっと脱線しました。

◆最初は大づかみに

つまりこの論考で私が言いたいのは、

「起業するとき、あまり厳密にポジショニングを決めるべきでない」ということです。

とくにコンテンツを創るタイプの人には、そう申し上げておきます。

それはなぜかというと、

コンテンツマーケティングで成功するには、コンテンツを創り続ける必要があるのに、あまり厳密にポジショニングを決めてしまうと、その狭いエリアのなかでコンテンツを量産することが難しくなるからです。

起業時に、そんな狭い領域に、充実した知見など普通ありませんので。

また、人間の興味はやっているうちにどんどん変化していくものなので、結局、エリアを限定し過ぎるとアイデアが枯渇し、量を出せなくなってゲームセットになる危険があるのです。

しかしコンテンツづくりは量を出さないと決して成功はしません。量が質に転化するのです。

私も数多くのセミナーをつくってみて、当たり外れを経験しながら、10個ぐらいの大当たりを出しています。

だからポジショニングは大づかみに決めておくぐらいで、とにかくたくさんのコンテンツを創ることに最重点を置き、縛りをかけ過ぎないほうがいい、というのが私の考えです。

そして、何が当たるのかはわからないので、最初、コンテンツはできるだけいろいろ数を出してみるべきです。

そして、当たる企画をいくつか重ねるうちに、自然に決まってくるのがポジショニングだと考えたほうがいいでしょう。

ヒット曲が複数出た段階で、そのアーティストのポジションは自然に決まっていくのと同じです。

◆結論

起業家はアイデアマンでなければなかなか成功しません。

「アイデア」という智慧が、富を得る最大の資源だからです。

そして、アイデアとはどこで何が出てくるか予想がつかないことがあります。

私も、「え、こんなテーマで書くの?」とひらめいたときは怪訝に思った記事が、サイトにあげたら人気を博すことがよくあります。

しかし、たくさんのコンテンツを生み出していくうちに、次第に自分にしかないユニークなポジションが決まっていきます。

最初から厳密にポジショニングを決めると、自然なひらめきを阻害してしまい、結局、平凡なものをつくることになりがちです。

大筋を決めたら、ひたすらインスピレーションを受けながらアイデアを出し続ける。

そして、仕事を継続するなかに徐々にポジショニングが固まってくる。

そういうものがいちばん自然に続く成功の王道だ、というのが私の考え方です。

それではまた。

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