三人の理髪師

遠江(とおのえ)です。

私はサービスを受けるときには、うまい人にやってもらうのが好きです。

同じお金を払うなら、その方が得だからですね。

ですから、私の散髪サービスを受ける歴はもう50年を超えますが(笑)、

この15年ほどは、超がつくほど一流の人に頭を刈ってもらっています。

私の頭を通り過ぎた人は数あれど、(遠い目)

特に心に残る三人の理髪師について語ってみましょう。

 

◆橋本龍太郎の頭を刈っていた人

最初に登場するのは、日本橋三越に隣接した店にいた理髪師です。

私がブラジルに行く前ですから、15年も昔のことであり、名前を失念してしまいました。

あんなに仲がよかったのに、とても残念です。

その人とはポツポツ言葉を交わすうちに、以前はホテル・ニューオータニで橋本龍太郎の頭を刈っていたとわかりました。

私は別に橋龍のヘアスタイルが好きなわけではありませんが、ダンディで鳴らした元総理大臣の髪を担当していたのであれば、腕が確かなことは間違いないでしょう。

カットのうまい人でした。

それまでやってもらった何十人の理髪師と、格が違うのはすぐにわかりました。

値段は1万円ぐらいはしたでしょうか。

繊細なのに大胆な人で、頭を洗ってもらう時の指が、確信に満ちて力強かったなぁ。

「遠江さんの髪は難しいんだよ」と言って刈っていたのを覚えています。

たぶん生え方がイレギュラーなのでしょう。(どこが)

一度映画に誘って、お茶を飲んだことがあります。

仕事場で見るときと打って違って、お洒落でダンディな姿で現れましたね。

早死で、ブラジルから戻ってきて店を訪れたら、すでに帰天された後でした。

 

◆松下幸之助の頭を刈っていた人(大阪編)

二人目は、大阪・リーガロイヤルホテルの米倉・大阪の山崎さんという理髪師。

「米倉」というのは、百年前からやっている老舗で、理髪店では一番有名ではないでしょうか。

山崎さんはその米倉・大阪のマスターで、昔、松下幸之助の頭をやっていた人です。

本当にひょんなことで松下幸之助話を知り、わざわざやってもらいに出かけていったのがきっかけで、その後5年ほど担当してもらいました。

ホテルの7階にある大きな理髪店の奥に、特別ブースがあって、そこが山崎さんの持ち場です。

この人もカットがうまくて、たぶん大阪で一番なのではないでしょうか。

もう一軒、梅田でかなり高額な理髪店に行きましたが、そこと段違いの腕前でしたから。

何十年も頭を刈られていると、ハサミのタッチで上手い下手はわかるのですね。

値段は1万5千円。

この人は、髪を刈った後、マッチの火でさっと毛先を炙る技を持っていて、そこが他の誰とも違います。

松下幸之助以外に、サントリーの佐治敬三の頭も刈っていて、おそらくかなりの数のVIPを知ってますね。

シャイで寡黙な人ですが、打ち解けると故郷の話とか、若い女の子に意外とモテる話をしてきて、よく笑いあったなぁ。

とても仲よくなって、大阪を離れるときにはずいぶん悲しんでくれました。

今でも大阪出張の折には、刈ってもらいに行ってます。

 

◆松下幸之助の頭を刈っていた人(東京編)

こちらは米倉・銀座本店のマスター米倉満さんです。

作家の福田和也が「日本で一番うまい理髪師」と本に書いていたので、すぐ行ってやってもらったのが縁になりました。

ちょうど私がブラジルから一時帰国していたときで、そのことを話したら、弟子筋にあたる人がサンパウロに店を出していると言ったのにはびっくりしました。

さらに私が「松下幸之助が好きだ」と何かの折に言ったとき、「ああ、幸之助さんは昔やってました」と普通に返されて、仰天したものです。

米倉さんは『床屋の真髄』という著作も出されている教養人で、時折交わす会話に含蓄があります。

義父筋にあたる人が、日露戦争でバルチック艦隊を破った戦艦三笠に乗って、東郷平八郎の頭を刈っていた話などが聴けるのですね。

こう言うと、私は老舗の理髪店ばかり通っていると思われるかもしれませんが、

実は芸能人がよく店に来る原宿MINXや、ディーン・フジオカの頭を刈ったメンズ美容師もよく知っている上で、

しかし最高の職人を挙げると、こういう人たちになるということなのですね。

米倉さんは、ハサミやカミソリの丁寧さで、右に出る人はいません。

この人に頭を刈ってもらったり、髭を剃ってもらったりすると、「芸術」という言葉が浮かんできます。

それぐらいやってもらった感触が別次元で、至福のときを味わえますよ。

値段は1万8,900円です。

 

◆サービスの神髄

以上、最新の美容師も知った上で、なおかつ最高のマスターとして三人の理髪師をご紹介しました。

三人に共通なのは、繊細にして大胆。丁寧だけれどすごく力強い。という矛盾の統合があることです。

矛盾していることの振り幅が、不思議な魅力になっている。

そして、サービスを受けている間中、サクサクと時間が流れていきます。

単刀直入に本題に入ってきて、あっさり難しい技をこなしていくというか。

楽しい会話をしているようで、決め所は万に一つも外さないというか。

玄人も唸らせるけれど、初心者にもわかりやすいというか。

値段も高いですが、やってもらうと福の神がついたようで、運が向いてきます。

私は幸運なことに、富系の神様をたくさん知っておりますので、その感覚はよくわかるのです。

この三人の理髪師は、富の神様に愛されているに違いありません。

サービスというのは、最後は、富の神様から光を引いてくることに行き着くのではないでしょうか。

富の神様から光を引いて、お客様に福縁をもたらすサービス。

私もまたそうありたいと思っております。
http://03auto.biz/clk/archives/fsdack.html

 

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