マクドナルドを反面教師にしたこれからの市場での戦い方

遠江(とおのえ)です。

マクドナルドが長期スランプに陥って、2015年11月現在ほぼ2年にわたって減収し続け、年内に150〜160店の閉店が決まっています。

先日も都内で40年も営業していた駿河台の老舗店が撤退し、マック閉店ポスターの後ろ姿で「See you」と手を振るドナルドが「切ない」と話題を呼んでいます。

ファストフードの覇者として君臨し、前社長の原田泳幸時代には一時八年連続増収で絶好調を謳っていたあとだけに、その墜落ぶりがかえって際立つ結果になっています。

私はマクドナルドが2012年12月期に7年ぶりの経常減益を出してから、その動向に注目して情報を集め続けてきましたので、「何が問題なのか」「本当はどうすべきなのか」についてある程度の見解が出せるように思います。

そこにはかなり反面教師的な学びと、一方では明日は我が身と練り直すべき未来戦略の両方が出てくると思います。

題して「マクドナルドを反面教師にした、これからの市場での戦い方」です。

◆原因分析

マクドナルドの低迷の真因は一体何でしょう?

結論から言ってしまえば、私はこれを「全体的なオペレーションの劣化による、サービスの低下」「不健康フードという評価の定着」だと見ています。

つまり、去年マスコミを騒がせた使用期限切れ鶏肉の使用とか、巧妙な実質的値上げへのクレーム、などは表面上に現れた現象に過ぎなく、もっと深い構造的なものが真の原因だと思っているのです。

「不健康で安くもないものを、サービスの悪い店で食えるか」というのが市場の声と見ていいでしょう。

つまりいまマクドナルドにはブランドイメージの失墜が起こっているのです。

ブランディングというのは、長い教育により徐々に積み上げていくものですから、それが根底から崩れかけているのをどう立て直すかが問われているのです。

だからそれは従来のハンバーガーにアボガドを挟んだぐらいで解決する問題でも、次々に小技の新商品を出してなんとかなる問題でもありません。

いまのサラ・カサノバ社長は、十年前にマーケティング担当重役として「えびフィレオ」とか「メガマック」のようなプチヒット商品を出した成功体験が忘れられないようですが、そんな対処療法で回復できるダメージではなく、もっと傷は深いのです。

最後の化粧のところだけ整えても、生活全般の乱れからくる衰えは隠せないのです。

生き方そのものが問題なのに、プロモーションとかマーケティングだけをいじっても駄目です。

いまの惨状はトップの原因把握のズレから起きているように、私には見えます。

◆ではどうすべきなのか?

まず「不健康な食品」という最悪のイメージを回復すべく、材料のところから始め、加工工程、清潔度、調理法に至るまで、あらゆるプロセスを見なおさねばなりません。

「不健康」という食品にとって致命的な定評がついたのには、必ず原因があります。

その原因は一つだけでなく、いろんなものが合わさって複合汚染になっているはずですから、川上から川下までの全工程を徹底的に改善しなければ治りません。

その上で、採算性を考えるには、私は「モグモグマック」だの「ハムレタスバーガー」だの「三角チョコパイ」だのと余計なラインアップを増やさずに、スティーブ・ジョブズがアップルを再建したときのように、フラッグシップ(旗艦商品)を強くすることに集中すべきだと思います。

「ビッグマック」のような基幹商品が、ほんとうに美味しくて健康的なハンバーガーに生まれ変わらなければ、基本的にマクドナルドのビジネスモデル自体が難しいでしょう。

鈴木敏文がマクドナルドの社長なら、生き残りを賭けた全工程見直しに踏み切ることは間違いないと思います。

「順調のときは権限委譲・危機のときは大政奉還」というマネジメントのセオリーからすれば、いまはトップが強力なリーダーシップを発揮して、改革の先頭に立たねばなりません。

そのイノベーションの過程で、「店が汚い問題」や「店員のはつらつ度が低い問題」などは自然に解消されていくはずです。

カサノバ社長は頑張っているとは思いますが、言葉や文化の壁で、大量の従業員を説得しながら変わらせる手腕は不足していると感じます。

彼女のピンぼけした改革策を見るにつけ、早くトップを交代しないと逆転打を打つ体力自体がなくなるでしょう。

◆われわれが教訓にすべきこと

日本の消費者は世界一難しいといわれます。

細かいところまでチェックしますし、とても移り気であり、空気が変わると一斉に移動します。

だから、空気を変え、リピーターとしてつなぎ留め、細部で感動してもらうために、事業者は努力を怠ることはできません。

アメリカ型の最初に収益目標を決め、それに見合った高価格で、一気にプロダクトローンチ風に売り抜けるといった大味な商法では生き残れないのです。

いっとき勃興期にはそういう売り方が通用しても、市場はすぐに成熟し、質の高い努力を継続する者だけが残るようになります。

そして、それが消費者にとってはいいものが買える、ありがたいことでもあるのです。

クレームや売上減はイノベーションをかけるべき重要な徴候です。

そのとき小手先のかわし方ではなく、抜本的に土台から見直していく勇気を持つことが、マクドナルドを反面教師にしたこれからの市場での戦い方になると思います。

それではまた。

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