仮想敵をつくって攻撃することでアクセスを集める手法への疑義
遠江(とおのえ)です。
◆原因結果の法則
この宇宙には「原因結果の法則」という根本原理が厳然と存在し、それが展開して、たとえば「努力する者は報われる」というような、
どの場所でもいつの時代でも当てはまることを誰も否定出来ない普遍の法則になっています。
そして、きょうテーマにしたい「与える者は与えられ、奪う者は奪われる」という法則も、この「原因結果の根本原理」から導き出されるものだと思うのです。
ネット上には誰が言い出したのか知らないが、経験則として「こうすると成功する」と信じられている法則らしきものが存在し、
それを知ると無批判に受け入れ、他にも拡散する行為が散見されます。
先にお断りしておきますが、これは誰かを特定して批判する意図で書いてはおりません。
なぜなら私もそういうものから情報は得ていますので。
ただこんな”法則”を、無条件に受け入れて実践していると、諸刃の刃で、最終的には己をも傷つけることになりかねない怖さがあることは、知っておくべきと思うのです。
こういう一時的には効果があることが認められているが、長期的にはどうなるかまだよく検証されていないものを”法則”と記します。
◆”仮想敵の法則”
そういう”法則”のなかでも、私の研究では、これはかなり危険なんじゃないかと思うのが、
「仮想敵をつくって攻撃することでアクセスを集める手法」です。
仮想敵をつくって攻撃すれば、自説への強力な賛同者を集めることができる、という”法則”ですね。
”仮想敵の法則”といっておきます。
この法則の肝は、いいことばかり言っていても、膨大なネットの中では埋没してしまう。それより仮想敵をつくってエッジの効いた批判を展開することで注目され、アクセスが集まって成功しやすいのだ、というものでしょう。
論争にギャラリーが集まるのを利用した”法則”といえます。
実は、逆説めきますが、私はこの手法を全否定するわけではありません。
この手法の効力、そして反作用を十分に理解した上で、それでもなお自らの信念に基づいてこの手法を使った人のなかに、歴史上の偉人がいることも知っていますので。
たとえばそれは日蓮です。
◆日蓮
日蓮は鎌倉時代、無名の僧侶だった頃、末法の世で間違った教説が広まっているために人心が乱れ、それが他国侵逼難(外国からの侵略)を招くと警鐘を鳴らしました。
そして、真言宗、禅宗、念仏宗、律宗の先行するライバル宗派を強烈に批判したのです。
「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」という言葉を使っていますので、かなり辛辣な攻撃です。
お金がなかったので無料で弘めることのできる辻説法という手法を使いました。
その結果、急速に賛同者を増やし、日蓮宗を立てることができましたが、しばらくして、大きな反作用を受け続けます。
竜の口で斬首されかけたり、佐渡ヶ島に流されたり、身延の山奥へ引っ込まされたりして、この世的には最後まで厳しい迫害を受けました。
しかし、その後、実際に元寇(中国の日本侵略)が起こり、神風でそれを打ち破ったことで、日蓮の警鐘の正当性がわかり、歴史に名を残しました。
ここまでの信念を持ってやるなら、私は”仮想敵の法則”を使っても何も言いません。
しかし、そういう信念もなしに、ただ結果が出るからと安易にこの”仮想敵の法則”を使うと、
大火傷をする危険性があることを知っておいたほうがいいと思います。
◆ケネディ
たとえばアメリカにもこの法則を実践した著名人はたくさんいます。
大統領選に出た人間など、みなやってますよね。まぁこれは政治学的に常套手段ですので。
とくに強烈にこの法則を使ったのはジョン・F・ケネディでしょう。
彼は明らかに「仮想敵をつくって攻撃し、政治的に勝利する」という思想を持っています。
対決型思想ですね。
それが大きなところではキューバ危機にもなりました。
ソ連のフルシチョフとキューバをめぐって核戦争の一歩手前までいき、チキンレースの果てに相手に引かせたのです。
この勝利で大変人気のある大統領になったわけですが、1963年11月22日ダラスでパレード中に頭を撃たれて暗殺されました。
私はケネディが嫌いではありませんし、歴代大統領の中でもトップ3に入る偉人だと思っています。
ただ、それだけの信念がないなら、安易に手法だけを真似しないことです。
反作用はそれなりに来ますので。
◆亀田一家
卑近な例では、亀田一家の窮状を見ればよくわかるでしょう。
彼らも典型的な”仮想敵の法則”の実践者です。
パフォーマンスもあったのでしょうが、対戦相手を事前から派手に攻撃して、
それで話題づくりをしてTVの視聴率を稼ぎました。
短期的には見事な作戦だったと思います。
三兄弟とも世界チャンピオンにし、全盛期にはTVも連戦、高視聴率を稼ぎ、
富もかなり得たと思います。
しかし、10年経ってみて、亀田父は日本のボクシング界から永久追放され、
三兄弟は日本で試合できなくなり、今年(2015年)は三兄弟とも海外で負けて、
みな世界チャンピオンから転げ落ち、長男は28歳の若さで引退しました。
◆作用・反作用
結局、この”仮想敵の法則”の実践者は、短期・中期的には目覚ましい成果を上げますが、
中・長期的にはかなり厳しい反作用にさらされるという特徴があります。
なぜ、そういうことになるのか。
それは、原因結果の法則が厳然と大宇宙に流れているからです。
言葉を換えれば、「作用・反作用の法則」です。
さらに別の言い方をすれば、「与える者は与えられ、奪う者は奪われる」からです。
日蓮やケネディは、相手のメンツを奪い反作用も受けましたが、国に必要な警鐘を与え、歴史に評価されました。
亀田一家も、相手のメンツを奪い反作用を受けました。ボクシングをメジャーにした行動は、歴史にどう評価されるかまだ未知数です。
しかし、繰り返しますが、”仮想敵の法則”には必ず反作用が来ることは一致しているのです。
◆まとめ
人間には想念の力というものがあり、たとえ強烈なファンを獲得しても、多数の人間から反感を買うと、念の力で反作用を受けるようです。
いま流行りの”塩対応”などというのも同類項に入ると見ていますので、私は決して本人のためにも勧めません。
いや、私は亀田と違う、ケネディと違う、日蓮と違う、と言うかもしれません。
しかしあなたがもし”仮想敵をつくって攻撃し、それによって成功の道を切り拓く”という考え方を持っているのなら、
同じ法則下にあると思ったほうがいいです。
どんなにうまくやったとしても、宇宙の法則からは逃れられないと知るべきでしょう。
ですから私の結論はこうです。
信念があってやるならよし。
しかし、富を得て長く活躍したいなら、安易に”仮想敵の法則”下に入るべからず。