収益最大化の智慧
遠江(とおのえ)です。
経営というものは基本的に収益最大化を目指しますので、きょうはどの経営者でも興味があるこのテーマでお話していきます。
世の中にはキラリと光る智慧を持った人物が、百人に一人とか、千人に一人とか、いろんなスケールで存在します。
◆小事例からの出発
たとえばFacebookを見ても、たまにかなりの知性を持った人物が記事をせっせと投稿している場合があります。
「智慧が富に変化する」というのが大きなテーゼ(指針)ですので、こういう人はやり方によっては大きな富を得る可能性を持っていますが、ただ思いついた智慧を投稿するだけの人は、散文的知性にとどまって、富を得るには至りません。
散文的知性を体系的知性に変えたときのみ、多額の収入が入ってくるのです。
パソコンにたとえれば、散文的知性は個々のソフトであり、体系的知性はウィンドウズのようなOS(オペレーティングシステム)です。
あるいはクリエイターの智慧とプロデューサーの智慧と言ってもいいでしょう。
Facebookにキラリとした投稿をする人は、クリエイターの才能があるのでしょうが、「ああこの人にプロデューサー的智慧が少しでもあれば大成功するのにな」と思うことは少なくありません。
そして、ネットビジネスで成功している人は、ほとんどがこのクリエイターの智慧とプロデューサーの智慧の両方をなんらか持っています。
コンテンツづくりと、売る仕組みづくりの両方ができてはじめて収益が上がるからです。
◆3つの事業パターン
そしてよく見ると、それぞれの人はどちらかが得意で、どちらかが不得手という特徴を持っています。
ある人はコンテンツづくりの資質が大きく、売る仕組みづくりはそれほど得意でなく、別の人はその逆という具合ですね。
そして、仕事が大きくなるとだんだん分業が始まっていきます。
コンテンツづくりが上手い人と、売る仕組みづくりが上手い人が組んで、大きな仕事にしていくパターンです。
その変化形としては、
1、コンテンツづくりに長けた人が、販売組織をつくって部下に任せ、社長兼コンテンツホルダーとして経営していったり、
2、マーケティングに長けた人が、コンテンツホルダーを傘下に抱えた組織をつくり、社長兼マーケッターとして経営したり、
3、自分はプロデューサーに徹して、コンテンツホルダーとマーケッターを抱えて、プロジェクトを回す経営をしたり。
だいたいこの3つのパターンになっていきます。
そしてこれは、ネットビジネスに限らず、リアルビジネスにおいても構造はほぼ同じと言ってよいでしょう。
本田宗一郎がコンテンツホルダーで藤沢武夫がマーケッターとして二人が組んで、世界のホンダになり、井深大というコンテンツホルダーと盛田昭夫というマーケッターが組んで、世界のソニーになったわけです。
小さなレベルでは無数の事例になって展開するということですね。
◆分業制の限界
しかし、一時期うまく回っていたチームも、大きくなるに従ってパフォーマンスが落ち、勢いをなくすケースもあとを絶ちません。
両者の力が不均衡になってうまく回らなくなるケースも多々あります。
実際にはこの分業式は、うまく行っていることのほうが極めて少なく、ほとんどはなにがしかのジレンマを抱えているように見えなくもありません。
それは、収益というものは川上から川下までの価値連鎖が、絶妙にうまく回っているときのみ最大化するからです。
ドミノ倒しの仕掛けのように、どれが一つが不適合でも、仕組みはうまく回らなくなるということです。
だから、収益最大化を目指すなら、トップはコンテンツづくりからマーケティングの仕組みに至るまで、すべてを視野に入れて最適化していくべきだと思うのです。
つまり下回りの実務は部下に任せてもよいが、最も大事なところの智慧は、常にトップが全体を見渡しながら出している状態こそ最強の経営といえる、と私は考えています。
◆「購買体験」の最適化
話をもう一度小さいところに戻して、ネットビジネスで考えたとき、一方でコンテンツの魅力が売れるために絶対必要であるならば、もう一つの要素であるマーケティングは、集客・教育・販売のサイクルを回す必要があるというのが現代の常識です。
「いいコンテンツ」と「集客」「教育」「販売」があって収益が上がる、という流れですね。
しかし実際は、販売の後に、その商品を使ってもらったり、サービスを受けてもらうという「購買体験」があることは言うまでもありません。(以後ここでは「体験」と略記します)
つまり、
コンテンツづくり→マーケティング(集客・教育・販売)→体験があって、
「体験」がよくなければ、そもそも売れなくなることは必至です。
この「体験」はコンテンツの消費でもありますから、二つは一体なので、もっとモデルを簡素化すると、
集客→教育→販売→体験
というサイクルが収益を生むエンジンであり、最後の「体験」のときに「コンテンツ」のよさが問われる、というかたちになります。
◆私の事例
私は以前、10万円のセミナーをつくり、それを上のサイクルを回して収益を上げたことがあります。
「収益最大化」という観点からその体験を振り返ると、最初はまぁまぁの売り上げだったのが、ある時点を越してから爆発するというプロセスを通りました。
これは、大きな収益を上げるビジネスにほぼ普遍的に現れる現象だと思います。
では、その収益爆発は「どの時点」で起きたのか。
それは、セミナーにどんどん人が参加し、何十回もセミナーを繰り返すなかで、内容のリファインが起き、その「体験時の智慧」を「販売」にフィードバックしたときに爆発したのです。
セミナーは、つくるときには最良のものをつくったつもりでも、実際に客を入れて開催すると、思ったほど受けないものや、意外なほど受ける内容に分かれてきて、回を重ねるごとにそれらをリファインしたとき、最高の反応がとれるものに仕上がります。
つまり「改善」の努力をする者にとっては、回を重ねるごとによくなるのがセミナーというものです。
そして極めて反応のとれるセミナーができあがったとき、それを「販売」企画にフィードバックすると、「ものすごく売れる」という状態になるのです。
しかしそれは決して「販売の智慧」単体で起きたことではなく、「集客」→「教育」とプロセスを経てブランディングができた上で「販売」したから爆発したわけで、要は、すべてのプロセスが必要なのです。
とくに「販売」→「体験」のプロセスで智慧のフィードバックが起きたとき、収益最大化の爆発が起きたのです。
つまり、この4つのサイクルすべてにかかわって最適化していったとき、収益最大化が起こせる、と言ってよいでしょう。
この現象を「トータルプロセスの最適化」による「収益最大化」と名付けておきます。
◆まとめ
つまり、収益最大化を成し遂げるには、トータルプロセスの最適化が必要です。
そして、これができるためには、川上から川下までのプロセスに通暁している必要があるのです。
石油王のジョン・ロックフェラーを研究してみると、彼が並み居るライバルを抜きん出て、史上最大の富豪になった理由は、この川上から川下までのトータルプロセスの最適化を誰よりも熱心に行ったからだ、というのが私の分析です。
そして、一つの事業でこの「トータルプロセスの最適化による収益最大化」を成し遂げると、他の分野にも応用が効いて、それで組織を拡大しながらどんどん発展していくことができるのです。
これがコングロマリット形成にも、クライアントを大成功させるコンサルタントにも必要な最大の能力であるというのが、本日の論考の結論です。
この「トータルプロセスの最適化による収益最大化」という智慧は、あらゆる業種のあらゆる規模のビジネスにも応用できるものと考えています。
それではまた。