ロックフェラー研究・概論

遠江(とおのえ)です。

私はいちど史上最大の大富豪ロックフェラーのセミナーをやるために、徹底的に研究したことがあります。

取り寄せられる本は絶版の古本も含め全て取り寄せ、線を引き付箋を貼りながらものによっては何十回も読み込み、自分に則して考え続けましたので、最後はロックフェラーの時代にタイムスリップして、一緒に経営したような気持ちにまでなりました。

なので、ここらで「ロックフェラーの成功要因とは何だったのか」という総括をしておきたいと思います。

巨大な人なので、一回で説き切れないので、きょうは「概論」として大づかみにポイントを俯瞰しますので、かえって参考にしやすいかもしれません。

論点を挙げながら一つずつ解説していきます。

◆非情な勝負師と反作用

ロックフェラーは石油産業の勃興期に、無数に現れた同業者を蹴散らして、完全トップを取ることによって莫大な富を築きました。

正直、その勝ち方は「非情な」としか形容できないところがあります。

のし上がっていく過程で、ライバルになりそうな者は、それが同業者であれ異分野のチャンピオンであれ、必ず打倒し、巻き込んで、大きくなっていきました。

そこには「資本は蓄積しないと大事業を行えない」という資本主義のセオリーに則った大義名分はあります。

小さな灌木が密生した雑木林では大木は育たないので、不必要なものを伐採し、大木になり切ったので逆に国を繁栄させた功績は大きいです。

しかし、その陰で多くの恨みを買いすぎました。

想念の世界とは怖いもので、たとえゴッドファーザーのように表に出ず、安全地帯から采配を振るっていても、人々の恨みの想念は時空を超えてロックフェラーに届き、彼は50歳そこそこで全身の毛が抜け落ちて、老人のようになり、死にかけてしまいました。

陰陽師の世界で呪(しゅ)が効いたと思えばわかりやすいでしょう。

非情な勝負師として勝ち進んできた反作用をたっぷりと受けたわけです。

◆見事な逆転打

ここでロックフェラーの素晴らしいのは、国中のブーイングに対し、桁外れの慈善家になることで、見事な逆転満塁ホームランを打ったことです。

24の大学、5000の教会、その他細菌研究所など、スケールの違う慈善事業を行い、晩年は国中から愛されて、97年の幸福な生涯を閉じました。

「そんなに儲けすぎて恨まれるのなら、逆に施せばいいだろう」

こういう単純ですが骨太の発想を、あれだけのスケールでやり切ってしまうところに、この人の偉大さがあります。

ほんとうに事業とはやってみないと何が出てくるかわからないものであり、
頭がよいだけでなく、並外れた行動力がなければ成功の彼岸に渡れないことがよくわかります。

このマイナスをプラスに変える逆転力が、ロックフェラー成功の大きなポイントですが、
さらに私は次の点を強調したいのです。

◆川上から川下までの網羅性

ロックフェラーが出たのはちょうどアメリカのゴールドラッシュ期です。

実際に、彼の時代にカリフォルニアで金が出て西部開拓時代が始まり、そのあとすぐに東部で石油が出て、こちらのチャンピオンになったのがロックフェラーです。

金と石油をめがけて無数の冒険者達が群がったのは、ちょうどネットビジネス勃興期とそっくりで、いつも時代は繰り返すわけです。

そして数多くの一攫千金劇があり、そのあと業界再編があり、最後にごく少数のチャンピオン達の世界に統合されていきました。

実際、石油が吹き出した当時は、全米から一攫千金野郎が集まり、オイルだらけの道を石油樽を積んだ馬車が行きかい、死んだ馬は放置され、夜は酒場で酒宴とギャンブルが続くという、お決まりの無法状態だったわけです。

しかし、ロックフェラーは採れた石油を売り抜いて儲ける投機的商売を横目にしながら、自身は採れた石油を「輸送し」「精製し」「各種製品に加工し」「組織的に販売する」という、川上から川下まで網羅した仕組みを構築していったのです。

どれか一箇所ではなく、流れ全体を把握して、無駄を省き、最適化を重ねた結果、彼が業界の親玉になりました。

鯨はあの巨大な体の何一つ無駄になることなく、すべてが富を生む商品になる、と言います。

ロックフェラーの智慧の核心は、まさにオイルを鯨のごとく商品化し尽くしたところにありました。

そして「採掘」「輸送」「精製」「加工」「販売」の価値連鎖のすべてから富を生み出したのです。

このロックフェラーの体系性に、私は強く惹かれます。

ここがロックフェラー大成功の勘所だと、私は考えています。

◆情報察知と実行力

あと、その体系的な智慧を支える「勤勉」がロックフェラーのさらなる美質であり、その「勤勉さ」の中身は、「情報察知と実行力」であったと私は捉えています。

つまり、なにか新たな動きを敏感に察知しては、すぐに手を打つ実行力があり、その勤勉さにおいて他を凌駕していたといえます。

たとえば、ロックフェラーは修行時代、貿易商のもとで働いていましたが、ヨーロッパの飢饉情報を得て、いちはやく食料品を輸出し、大儲けしています。

また独立後、南北戦争のさなかに、自分の事務所を参謀本部のようにして戦況を収集分析し、それに基いて物資を動かして巨利を得ています。

石油事業に入るときには、長期に渡るパトロール旅行をし、現地を深く視察して勘所をつかんでから参戦しています。

普段は上品な紳士として事業を統括していても、必要とあらば長靴を履いて安ホテルに長逗留し、油だらけになって商機をつかんでくる逞しさがあったのです。

このような勤勉さを組織のカルチャーにして、ロックフェラー帝国が大きくなってからは、国家レベルを超えた情報収集力を有していると言われています。

情報を察知したら、その兆しを捉えてどんどん実行する。

ものごとに着手する前はひじょうに慎重であるが、いったんやるとなったら人並み外れて大胆にもなれる、こういう相反する資質を持っているところがロックフェラーの大きさだと、つくづく思います。

◆まとめ

巨人ロックフェラーの成功ポイントを俯瞰してみました。

1、逆転力
2、体系性
3、情報力

これが私の捉えたロックフェラーの力の核心です。

なかでも2番めの「体系性」が、重要だと思っています。

収益を最大化するには、「トータルプロセスの最適化」が最強の方法論だと思うからです。

◆そして信仰

ロックフェラーに関しては、このような偉業のバックボーンになったプロテスタントの信仰が、また外せない要因になっていますが、これは論点が広がるのできょうは割愛します。

ただ、単なる功利主義ではあれだけの偉大な功績を起こせなかったことは確かなのです。

偉人には偉人たるだけの精神性が必要だということは忘れてはなりません。

また、そのことをお話する機会もつくろうと思います。

それではまた。

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