一回に一つの原則
遠江(とおのえ)です。
読者に「文章を書きましょう」というと、よく「書くネタが続きません」という答えが返ってきます。
「富を得るために文章を書く生活に憧れます。でもそんなにたくさん書く内容がなくて……」という不安ですね。
よくわかります。
私はその悩みに十分共感しながら、それを乗り越えてきました。
実は解決策はそれほどむつかしくありません。
ポイントは「一回に一つの原則」を守ることです。
◆苦(く)
文章を書こうとすると、初回は「あれも言いたい、これも言いたい」ということで、ものすごく盛り沢山になることがよくあるでしょう。
アウトプットのネタがそれなりに貯まっているからですね。
ところがアラカルト的に、いろいろなことを盛り込んでいると、何回か書いているうちに種が尽きてきて、急速に言うことがなくなったりします。
そして「書くことがない!」という呻吟(しんぎん)が始まり、やがて筆を折ることになる。
読む方からしても、最初は幕の内弁当のように、ありすぎるほどおかずがいっぱいあったのに、
しばらくすると「カレー」とか「うどん」みたいな単品料理になってきて、だんだん幻滅するわけです。
挙げ句の果てに、だんだんたまにしか料理が出せなくなって、読者が離れていく。
これがネタが続かなくなって消えていくパターンですね。
当然、富は稼げません。
◆集(じゅう)
これは何が原因かというと、最初に幕の内弁当のように詰め込みすぎたのがよくない。
「いろいろなことを盛り込む」スタイルで話し始めたがために、いっぱいネタを用意しなければならなくなりました。
しかも、小ネタがいっぱい出てくる割には、一つひとつの掘り下げが甘いので、軽い印象しか残りません。
で、目先を変えるネタが尽きたところでゲームセットですね。
なぜいろんなことを盛り込もうとするのか?
それは読者に飽きられたくないからです。
一つのテーマで興味を引っ張る自信がないから、次々目先を変えて、何とかもたせようとする。
でもこれは消耗します。
しかも、読んでいる方は目まぐるしいので、終わってみたらたいして印象が残っていません。
「あれ、何のことを言ってたのかな?」。
そして、混乱した脳はノーと言う。(笑)
かくして肯定的な反応が取れないので、稼げないまま終わるわけです。
◆滅(めつ)
一方、富を得る文章というのは、一本の川のように流れがあって、しかも変化に富んでいます。
山間(やまあい)の葉っぱにできた露が、せせらぎとなり、清流となって、
いくつかの滝を経て、川幅がだんだん広くなり、
やがて大河となって平野を流れ海に注ぎます。
さらに海水はどこかで蒸発して雲になり、山間まで流れてきて雨を降らせ、また葉っぱの露をつくる。
こんな縁起の変転が目に浮かぶでしょうか。
景色はどんどん変わって飽きさせないのに、一つのテーマで最初から最後まで貫かれていますね。
この場合、テーマを一貫させるというのは、わりと簡単でしょう。
難しいのは、そのテーマをどのように変転させ、飽きさせないようにするかという「流れのつくり方」ではないですか?
それさえできれば、文脈の川を泳ぐ魚の目で見てもよし、全体構成を見渡す鷲の目で見てもよしの文章が書けるはずですね。
でもこれは習得可能な技術です。
★実例
私のコンサルをいま半年ちょっと受けておられる人がいて、昨日のアンケートで訊いた「自分なりの文章テーマと3つの論点出し」を返してこられましたが、
ひじょうによくできていました。
テーマも「うん、これは読んでみたい」と思えるキャッチーなものでしたし、論点も「なるほど、おもしろそうだな」と興味を引くものでしたから。
実は「論点出し」というのは、単に書くべきことを箇条書きにするだけでなく、その一つ一つに「ハッとさせるウィット」が必要なのですね。
メルマガではそこまで教えてなかったので、できてなくて当然ですが。
その方はコンサルを通じて、やり方を学び、自分で書いてみて、フィードバックを受けるという繰り返しで、文章力が格段にアップしていたのです。
いずれこの方は、文章で富を得られるようになるでしょう。
◆道(どう)
でも、そうなるためのポイントはシンプル。
「一回に一つのことを言う」と決意するだけです。
一つに絞ることを恐れない勇気が必要。
この場合の「一つ」というのは、テーマが一つという意味ですね。
一つのテーマを中心に置いて、そこから離れないようにしてください。
しかしてそのテーマをいろんな切り口から料理し、その献立もコース料理のように、縁起がつながっているようにしましょう。
懐石料理は、全部うまい流れになって出てくるでしょう?
論理が数珠つながりのようになって、いろんな世界を旅して、やがて元に戻ってくる。
こういう水の変転のような文章を書こうと思ってください。
そのためには「一回に一つの原則」を守ることです。
そしてその流れに智慧を絞ること。
これが一気に読めて、しかも深い印象を残す文章の極意だと、私は思います。
マスターするにはスクール形式が有効でしょう。
文章力をアップさせるミニ・エクササイズをどうぞ。
http://03auto.biz/clk/archives/yytgvj.html