「学んでも実践できない」を打ち破る法
遠江です。
「学んでもなかなか実践できない」という悩み。
これは、ほんとうに多くの方が抱えておられると思います。
そこで前回に引き続き、この暗がりに別の角度から光を当ててみましょう。
◆学びの逆説
きょうお伝えしたい秘訣は何か?
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それは「多くを期待しすぎない」ということ。
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多くを期待しすぎるから、挫折感が強くなるということですね。
たとえば一冊の本に書いてある教えを、すべて実践しようと思えば、誰だって不達成感を味わいます。
それは音声教材でも同じこと。
だから私は、一つの教材から一つでも得るところがあれば儲けもの、という考え方をお薦めします。
別の言い方をすれば、これを読んだら(聴いたら)一つは何かつかもう、と思って学ぶこと。
その意味で「一」というのは、実践するときに大きな力になる考え方だと思いますよ。
もちろん何でも一つでなければならない、と制約をかけるつもりはありません。
ただ、「たくさんありすぎてたまらない」と感じるなら、
「一つでいいのだ」と単純化することは、とても気を楽にしませんか?
二兎を追う者、一兎も得ず。
という諺(ことわざ)もあるぐらいですから。
多くを期待しすぎないほうが、かえってたくさん得ることができる、という逆説もあるのです。
◆「一」という概念
どんな複雑な形態のものも、重心は一箇所に集約されます。
たくさんいる蜜蜂も、たった一匹の女王蜂(じょうおうばち)を中心に働きます。
このように、すべては一点に帰一するという宇宙の原理があるのは事実でしょう。
だからまず一点をつかむ。
その一点を外さないようにする。
ここに意識を集中しましょう。
一つつかめればいい、と賢く見切っていくことが、
学びの実戦においてはコツになるとお考えください。
意外に「一」というのは強い概念なのです。
◆ある合気道の達人
合気道の極意に、「臍下(せいか)の一点に心をしずめ統一する」というものがあります。
「臍下」というのは「ヘソの下」ということで「丹田」を意味します。
私も若い頃、藤平光一(とうへい こういち)という人の本でこれを知って感銘を受け、
その方の新宿の道場に見学に行ったことがあります。
そこで弟子筋の師範代に稽古をつけてもらい、
常に重心を意識しながら体を動かすことを、手取り足取り教えてもらいました。
つまり中心が決まっていないと、
心身がバラバラになって弱くなる、ということですね。
この藤平という先生は、臍下の一点に気をしずめ、小柄なのに大柄な門人たちをかるがるところばしていました。
王貞治に一本足打法を指導したのも、この藤平光一だと言われています。
「一」の強さですね。
◆ダーマトグラフ読書法
ですから前回とのからみで言えば、
何か学んだら、その内容を振り返ってみて、
一つコツをつかんで反芻する、
ということをやってみてください。
最後は一つにしてしまう、ということで言えば、
「冨伝道ヴォイス」に収録した「ダーマトグラフ読書法」がその経緯を詳しく語ったものになります。
私もたくさんの本を読みながら、
「結局、この本のポイントはここ」という学び方をしているのです。
そのために私独自で編み出したノウハウを使いながら、
投資した冨以上のものをそこから引き出す、
ということをやっています。
◆注意点
このワンポイント学習法、とでもいうべきもので一点、誤解なきようにお伝えしたいのは、
最後は一つになるのなら、
そのポイント集みたいなものだけを学べばいいでしょう、ということではないということです。
すでに要約されたものだけを、手軽に学ぼうと思っても身につきません。
ダイジェスト版の便利さもあるにはありますが、
やはりいっぱい話を聴いた上で、いろいろな感銘を受けつつ、
最後は一点に集約する、というプロセスを大切にしてください。
あらすじだけを読んで映画を観た気になる、のはおかしいでしょう?
◆まとめ
やはりしっかり学んだ上で、一点に集約すべきです。
それは旅行と同じで、
ガイドブックを見るのと、
実際に行くのとでは、違いがあるじゃないですか。
その襞(ひだ)の部分の体験は大事にしてほしいのです。
その上で「学んでも何も残らない」という弊害に陥らないよう、
「一点にまとめて覚えておく」ということを推奨しているということ。
ですから、
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たくさんあるように見えて、実は一つ。
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という考え方を大事にしてください。
これが、学びを実践につなげる秘法だと信じます。