永く活躍する人の共通点
遠江(とおのえ)です。
私はビジネスでも芸術でも、永く活躍する人に注目します。
それは自分もそうありたいと願っているからに他なりません。
たとえばシンガーソングライターも含めた広い意味での「歌手」という範疇で、
永く活躍している人を研究した結果、共通点と思えるものをたった1つ
挙げるとするならばそれは何でしょう。
私なら「歌詞が聞き取りやすい」という点を挙げます。
歌詞が聞き取りやすい人は永く生き残り、
歌詞が聞き取りにくい人は生き残れない、
単純化すればそういう結論になるのです。
◆息の長い歌手、そうでない歌手
例を挙げるとするならば、
フランク・シナトラ、ビートルズ、松任谷由実、中島みゆき、古いところでは美空ひばり、
こういう人たちは例外なく歌詞がよく聞き取れます。
もちろんこういう人たちは音楽性も非常に優れているのですが、
ただ、音楽性が優れていても歌詞が聞き取りにくい人は短命になりがちです。
たとえば、宇多田ヒカルや椎名林檎はこの観点からすると、
音楽性は優れていても、歌詞は聞き取りにくい。
まぁ彼女たちは一流なので、短命と決めつけるのは可哀想ですが、
すぐ消える歌手は名前を出しても誰も知らないことが多いので、
あえて有名どころで例を出せば、ということです。
でも、宇多田ヒカルも椎名林檎も私はパーソナリティは好きですが、
何を歌っているのかは聞き取りづらいので、
残念なことに詞の世界に遊ぶことは困難です。
◆長命の理由
歌詞で勝負できる歌手がなぜ長命なのかの理由を幾つか挙げてみます。
一つは、言葉の力により聴いていて感情が動かされやすいのです。
メロディが素晴らしいのと、メロディと歌詞の両方が素晴らしいのとでは、
相乗効果の違いによって、後者が圧倒的に有利なのは当然ですよね。
二つは、加齢によって声が多少衰えても、
詞の表現の深みによってカバーが効くということです。
50年以上第一線で活躍したシナトラや、彼の後継者といわれているトニー・ベネットなども
声は若い頃に比べてだいぶ嗄(しわが)れていきますが、
歌詞に人生の深みが加わって、60歳以降でもヒット曲を出しています。
三つは、歌詞力の強い人はだいたいにおいて人間力も強くて、
声量などとは関係なく存在感がとてもあります。
言葉に力があれば、声の良し悪しを超越した説得力があるということです。
◆セミナーの場合
実はセミナー講師も同じでして、
話の聞き取りやすい講師は永く活躍できる傾向が明白にあります。
千回以上演台に立ってみて、数多くの受講者の感想を聞いても、
「話が聞き取りやすくてよかった」というのは、
高評価の要因のかなり上位に来ます。
逆を言えば、話が聞き取りにくくてストレスを感じるケースが、
思ったよりも多いようなのです。
実際に、かなり高名な話し手であっても、
「◯◯さんの話は聞き取りづらかった」という類の声を
けっこう聞いたりもしております。
つまりこれは聞き手にストレスを与えてしまって、
Not Listenの壁を越えられていない状態を指します。
どんなにいいことを言っていても、
聴いてもらえなければ、そこから先はないわけです。
◆エピソード
フランク・シナトラは17歳の頃、歌も歌えるウェイターとして
ニュージャージーのレストランでバイトしていました。
彼がチャンスをつかんだのは、その店に
当代人気のビッグバンド・リーダーである
ハリー・ジェームスが来て、彼の歌声を気に入ったからです。
誰もたいして気に留めていなかった若き日のシナトラの可能性を、
彼はすぐに認めて、その場で自分のバンドに引き入れたのです。
後年、インタビュアーから「なぜ、あのときシナトラを見出したのですか?」
と訊かれたとき、ハリー・ジェームスはこう答えたそうです。
「シナトラの、歌詞を語るように歌うスタイルが気に入った」
一流音楽家の心をとらえたのは、
十代の少年の言葉の力だったのです。
シナトラについてもっと知りたければ、こちらの記事をどうぞ。
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フランク・シナトラとビートルズ