デュエットの達人たちに学ぶビジネス・コラボ成功法
遠江(とおのえ)です。
最近Webをリサーチしていると、情報起業家たちのビジネス・コラボで賑わっています。
一方、エンターテイメントのほうでもトニー・ベネットとレディ・ガガのような大物アーチストのコラボ企画が打ち上げられています。
別々の個性が融合することで、新しいマーケットを開拓しようという一つの伝統的手法ですよね。
このやり方について、かねてから思うところがあるので、きょうはそれを述べてみたいと思います。
◆お互いにインスパイアしあう
このデュエットとかコラボの本質は、異質結合によるイノベーションにあります。
つまり、新しい創造を行うために、お互いが協力しあう、というのが根本にある理念になります。
もちろん企画段階ではどのコラボもそのようなことを考えて始まるわけですが、大事なのは、コラボしているパフォーマンスそのもので、相互のインスパイアがどれだけ起きているかなのです。
顧客は間違いなくそこを見て、素晴らしければ買うし、そうでもなければ買わない、ということが起きます。
企画で盛り上がるのはあくまで舞台裏の話で、実際にステージに立ったとき、どこまでそれが表現されているかが成果を決めるわけです。
そして、映像とは正直なもので、実際のパフォーマンスにお互いの関係とか、腹の中で何を考えてやっているのかが、白日のもとに晒されます。
最近流行りのウェビナーで顔出しして、コラボトークをするなかに、すべてが現れて顧客の評価を浴びることになります。
◆相手と喰い合う愚
そのとき最悪なのは、お互いが前に出ようとして喰い合う感じが出てしまうことです。
たとえば相手の話が終わらないのに、先食いして自分の話を始めようとした瞬間。
あるいは、自分の話はにこやかにおこなうのに、パートナーが話をしているときには目が死んでいるとき。
お互いを褒め合っているとき、なぜか宙を泳いでいる目。
一人が一生懸命話したら、次はもう片方が一生懸命話し、そのあいだに何の交流も感じられない空気。
こういうものが本音では利益だけで結託した奪う愛コラボに、特徴的に現れる現象です。
「奪う愛」とは読んで字の如く、一見愛に見えて、実は相手から奪おう奪おうとする行為のことです。
しかし映像でそれを感じた企画は、きっと購入した中身もそうですから、懸命な読者は決してこの類に近づいてはなりません。
まぁ稼ぐ系は自分が稼いでいることを上手にアピールしないと集客できませんから、そこが難しいところですが。
でも「パートナー同士で喰い合ってるな」と感じたら、顧客であるあなたも食われてしまうと思ったほうがよいでしょう。
ただし、これはお互いが切磋琢磨するのを否定するものでは決してありません。
競争していてもいいのですが、お互いが十分生かし合っているか否かの問題なのです。
その意味で、正直にすべてが映しだされる映像とは、素晴らしくもあり、恐ろしくもあるメディアです。
◆私の選ぶコラボの名手
私がうまいと思うのは、たとえばフランク・シナトラです。
この方はかなりアグレッシブな性格なので、「おや」と思うかもしれませんが、彼はデュエットの名人だと思っています。
どこがというと、シナトラは相手の歌をよく聴いていて、向こうにファインプレーがあるとこちらもインスパイアされて、さらに素晴らしい歌唱をするからです。
大御所エラ・フィッツジェラルドとの数多い共演でも、彼女のアドリブにパッと閃くように笑って、アドリブを返す瞬間をたくさん観てきました。
娘のナンシー・シナトラと共演しても、ほのぼのとしながらからかい合う親子の特別な情が、観ているものを楽しくさせます。
つまり老若男女、ベテラン・新人の別なく、誰とやってもうまいのです。
あるいはトニー・ベネット。
U2のボノと共演したとき、ロック歌手がスタンダードを流暢に歌うのを、拍手しながら歌い返し、そのあとボノは大喜びして踊り出します。
デュエットしながら後進を育てる感じの歌手は、彼をおいてほかには見当たりません。
シナトラもベネットも、晩年になってからデュエットのミリオンアルバムを連発しています。
あと日本では大川隆法という方のコラボが最高です。
歌手のあとに宗教家が出てきて「えっ」と思うかもしれませんが、異質結合が新しい創造を生むのだと理解してください。
この方は24年前、日曜朝のTVで田原総一朗と対談しましたが、舌鋒鋭い田原氏への柔らかい論理的な返しが絶妙でした。
第一級の質疑応答になっていましたし、バトったはずの田原氏が最後に、「また是非来てください」とお願いしていたのが印象的でした。
それ以外にも多数のコラボが書籍になっていて、ほんとうに誰とやっても懐が深くて、エンターテイメント性もひじょうに高いです。
本で読んでも楽しいですが、映像をご覧になることを強くお薦めしておきます。
◆松本人志ときみまろ
このようなデュエット、コラボの名手たちは、1+1を必ず2以上にします。
ちゃんと台本があるソフトより、アドリブのひらめきが魅力度として勝つことがあるのです。
そういえば、先日のバラエティ番組で、ダウンタウンときみまろが居酒屋でトークしていたのがおもしろかったです。
どちらも大御所といっていいクラスの対談で、とくにきみまろの松本人志へのリスペクトが半端なかったですが、二人は対照的な芸風の持ち主です。
台本をきっちり決めて熟年相手に笑いを取りまくるきみまろと、アドリブで勝負して舞台から客を見たところからすべてをつくる松本人志。
その二人が台本なしでコラボしていて、文句無しに第一級のエンターテイメントになっていました。
トークを終えて別れたのち、松本が「しかしあの人かっこよかったな」と呟いたのに思わずじーんと来ました。
これからも異質結合のビジネスコラボは花咲かりでしょう。
そのとき、このような幸福な化学変化があちこちで起こることを期待し、自らもそうありたいと心に期するものです。
ではまた。