すべてを自前でやってのける衝撃
遠江(とおのえ)です。
私はついこの前まで大阪で、「クワガターズ」というバンドでエンターテイメントをしていました。
これはビートルズのコピーバンドで、Beatlesが「カブトムシ」であることをもじって「クワガターズ」と名付けたものです。(笑)
私はボーカルとして「Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)」や「Hey Jude」や「Eight Days Week」などたくさんのレパートリーを仲間と演奏して、その筋ではかなりの人気を博しておりました。
ドラムスは20歳、ギターは19歳、ベースと私は50代で、平均年齢30代の世代超越バンドとして、異質結合をした新しさがあったのです。
ビートルズには、自分たちで作詞作曲をし、歌い、コーラスを付け、演奏までやってしまうという、すべてを自前でやってのける衝撃がありました。
ジョン・レノンとポール・マッカートニーは、それぞれソロでやっても世界のトップアーティストになる実力がありました。
クラシックの世界で言えば、ベートーベンとモーツァルトが組んだぐらいのインパクトがあったのです。
また脇を固めるジョージ・ハリスンにも他のバンドなら四番を打てる力がありましたし、リンゴ・スターにも彼にしかできないドラムの華がありました。
こういう才能が集まって自作自演というまったく新しいスタイルで登場したので、時代を変える爆発的な人気を博したのです。
私は14歳のとき、阪急デパートのビートルズ・フェスティバルで初めて彼らの音楽の洗礼を受け、インスピレーションで創造された作品の素晴らしさを教わりました。
◆大物同士のコラボという流れ
この前、ユーチューブで「The Fab Four」という世界的なビートルズのコピーバンドの演奏を視聴して、初期のヒットソングから後期のオーケストレーションまですべて四人で再現している姿を見て、改めてすべてを自前でやってのける衝撃にノックアウトされたのです。
もちろんシナトラのように大きな組織的分業で数多くの作曲家・作詞家・編曲家とビッグバンドを動かし、長年にわたって活躍するアーティストも素晴らしいと思います。
ですが、四人という限られたリソースですべてをまかなって、しかも眼前でパフォーマンスを繰り広げるビートルズというスタイルには、人を興奮させる抗いがたい魅力があります。
オールラウンド・プレイヤーがチームを組んで、壮大なプロジェクトを成功させるというスタイルには、人間の持つ限りない可能性を感じるからだと思っています。
一人でも十分やれる人同士がコラボして、個性と個性がぶつかり合いながら、さらに素晴らしい化学変化を起こすところがスリリングなのです。
そして、時代がまたそのようなコラボセッションによる異質結合を求めているのではないか、というのが私の持っている大局観です。
ダウンタウンが萩本欽一やビートたけしなどの大御所たちと飲み屋でトークする番組が人気を博しているのもその現れでしょう。
トニー・ベネットがレディ・ガガとコラボして、次々とデュエットアルバムをヒットさせているのもその流れだと思っています。
あるいは『アベンジャーズ』という映画で、アイアンマンやキャプテン・アメリカやマイティ・ソーらのヒーロー達が一同に介してタッグを組むのもその筋でしょう。
本当に才能と人気のある者同士は、単なるライバルとして切磋琢磨するだけでなく、一緒に組んで新しいプロジェクトを生み出すとおもしろいのです。
◆若者を奮い立たせる興奮
このような夢の共演を成立させるには、それぞれが本業で頑張っていることが条件です。
現役でトップクラスの活躍をしている者同士が組むからこそ、大きな話題を呼ぶわけで、落ち目になった者同士が弱者連合を組むのではいけません。
自分自身が強者で一線を歩みながら、しかもライバルに対するリスペクトと寛容性を持っていること。
こういう実力と人格を陶冶していることが大事だと思うのです。
また、大物同士が組むからといって、いい加減で”なあなあ”のやっつけ仕事をするのも興ざめです。
逆に、サプライズは真剣にやってこそ成功する、という素晴らしい例をたくさん見てきました。
古くはフレッド・アステアとジーン・ケリーのトップ・ミュージカル男優が組んだコラボダンス。
アル・ジョンソンとビング・クロスビーのトップ歌手が組んだデュエット。
フランク・シナトラとエルヴィス・プレスリーが共演したテレビ番組。
スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツが並んで受けたインタビュー。
日本では三波春夫と村田英雄の両雄が共演した「皆の衆」。
本田宗一郎が盛田昭夫に招かれて、ソニーの社員の前でした講演。
そして、大川隆法と渡部昇一が行った対談。
そういう夢の共演を見るたびに、「人間って素晴らしいなぁ」と子供のように興奮してしまうのです。
その意味で、成功者同士のコラボには後進の者を奮い立たせるエンターテイメントがたしかにあります。
その土台には「すべてを自前でやってのける衝撃」というものがあるのではないでしょうか。
私もそのようなエンターテイメントをたくさん創造していくつもりです。