『同期の桜』はリバイバルする可能性がある
遠江(とおのえ)です。
きょうはちょっと変わったタイトルをつけてみました。
『同期の桜』は第二次世界大戦のときに、日本の零戦特攻隊のことを歌った歌で、軍歌として最も有名なものです。
これはいままで右翼とか街宣車をイメージさせるものだったので、まったく表舞台から消えていた歌ですが、ひとつ変わるとリバイバルする可能性がある、という話です。
つまり、いままったく陽が当たっていないものでも、ある種の条件と智慧が加われば、大ブレイクする可能性もあるということを論じてみたいと思います。
まず、『同期の桜』とはどういう歌か、改めてご紹介しましょう。
◆『同期の桜』作詞:西条八十(やそ)、作曲:大村能章(のうしょう)
貴様と俺とは 同期の桜
同じ航空隊の 庭に咲く
咲いた花なら 散るのは覚悟
見事散ります 国のため
私は今朝、数十年ぶりにこの歌を思い出し、心の中で歌ってみると、完璧に歌詞とメロディーが再現できました。
別に私は軍歌ファンでもありませんし、昔この歌を声に出して歌った経験もありません。
普通の人と同じように、どこかで耳にして、何となく覚えていただけです。
しかし、そのような市井の人間に、数十年後、完全に思い出させるこの歌は、まずコンテンツとして優れていると思うのです。
なぜなら、人の記憶に永く残るということ自体、星の数ほどあるライバルのなかで、抜きん出て優れたコンテンツの条件を満たしているからです。
作詞家の西条八十は、詩人にしてフランス文学者で作詞もする教養人であり、『青い山脈』、『蘇州夜曲』、『王将』などのメガヒットを連発した人ですから、今で言えばヒットメイカーの松本隆ぐらいの格はある人でしょう。
しかし、それにしても数十年後、完璧に覚えていたことには驚きました。
しかも、歌詞をよく吟味してみると、主人公の決死の心情や、仲間への友情、桜に象徴される日本への愛、などが胸に沁みる名曲だと素直に思います。
それが『同期の桜』という原曲に込められたパワーなのです。
◆時代を捉える
そしていま、戦後七十年を経て、この歌がもう一度受け入れられる時代環境に近づきつつある、というのが私の見方です。
たとえば『永遠の0』の大ヒット。
ゼロ戦特攻隊の小説や映画がこんなに人気を博するなど、十年前には考えられなかったことです。
たとえば尖閣や南シナ海での中国の侵略主義。
鳩山由紀夫に代表される平和ボケから、日本がようやく目覚めざるを得ない外交上の危機が、東アジアに起こっています。
たとえば自衛隊に対するポジティブなイメージ転換。
いままで平和国家の陰にいる暴力装置と継子扱いされてきた自衛隊が、東日本大震災や御嶽山噴火のあと救援で大活躍して、長渕剛のエールなどもありイメージがだいぶ上がっていること。
加えて安保法制の改正により、南シナ海で仮に中国が有事を起こしたら、米軍とともに自衛隊が戦う可能性が出て、もしそうなったら一気に世論が愛国に変わる可能性があります。
また、8月15日の靖国神社参拝が、前年の8倍という、爆発的といっていいほどの増加の仕方をしていることもあります。
「歌は世に連れ、世は歌につれ」という言葉があるように、歴史を見れば戦時には愛国歌、不況時には応援歌というふうに、ヒット曲が時代背景から生まれていることは明らかです。
さらに、「桜」という日本を象徴する美には、根強い不動の国民的支持があります。
私は一時期、地球の裏側のブラジルにいて、「桜」ほど日本をうるわしく思いださせるものはありませんでした。
このようなことを綜合して、この国の時代背景はいま『同期の桜』的なものを受け入れつつあるように、私には見えます。
◆新装開店する
ただし、単なる昔の軍歌風のままでリバイバルすることはないでしょう。
古いものが復活するとき、多くはまったく新たな装いをとって現れるからです。
たとえば『永遠の0』に主演した岡田准一のような、ジャニーズのトップタレントが『同期の桜』を歌えば、かなり新しい感じが出るでしょう。
あるいは同期の仲間たちと時代を創っているAKBの指原莉乃とか渡辺麻友とか柏木由紀が、現代風にアレンジして『同期の桜』を歌えば、また意外性は大きいことでしょう。
さらに、まったく同じ歌ではなく、『同期の桜』へのオマージュとして、同じような題材を新しい歌で表現すれば、ぜんぜん違った新し味を出せるに違いありません。
要するに老舗を古い造りのまま再オープンさせるのではなく、老舗に新しい衣を着せて新装開店するプロデュース力が必要です。
意外に若い世代はゲームやアニメを通して、素直な愛国心を持っているように見えますから、仕掛け方によっては大ブレイクする可能性があると思っています。
また、大人たちも安倍政権の一強状態を見ても、心中、かなり保守的に回帰していますから、じゅうぶん『同期の桜』的なものを支持する下地はあると見えます。
あとは「軍事アレルギー」「特攻アレルギー」のようなものが立ちはだかっていますが、東アジア情勢如何によっては国論がガラリと一変する可能性があります。
世界では愛国心を持っているのは当たり前で、国民の愛国心が落ちたところは歴史上みな国として滅んでいます。
だから、上手な仕掛けとタイミングさえ合えば、私は十分大ヒットリバイバルする可能性があると踏んでいます。
でも実は、この稿の主旨は『同期の桜』そのものではありません。
それぐらい意外なものでも、時代を捉え、じょうずに新しい装いを施せば、メガヒットを打つことができるのだというのが言いたかったことです。
だからあらゆる可能性を否定せず、常識をくつがえす発想を持ってビジネスをやっていきましょうよ。
それではまた。