思想の先行性

遠江(とおのえ)です。

この世で最も貴重であり、希少価値が高いもの、それは「人生の時間」だと思います。

人間の一生は八十年、寿命が伸びてもせいぜい百年ぐらいの短いものです。

特に人生半ば過ぎると光陰矢の如しで、本当に年月の過ぎるのが早いものです。

その有限の時間のなかで、いろんなことをやり遂げるために最も強力な智慧は「思想の先行性」だと私は思っています。

「思想の先行性」とは、「まず思想から出していく」という考え方です。

まず思想から出していって、その思想の磁力にいろいろなものを引き寄せさせ、そして実現モードに入っていく。

こういうやり方が、いちばん大きな仕事を、いちばん早くやれる、というのが私の考え方です。

ただ、この簡潔な言い方だけだとミス・リーディングする人が出てくる可能性があるので、もう少しくわしく解説します。

◆有言実行のスタイル

最も自由で、最も時間の速いもの、それは「思想を出す」という行為です。

人間には「何でも考えることができる」という創造の自由が与えられていることが一つ。

そして、思想を言葉にするには、さほど時間がかからないということが二つ目の理由です。

もちろん頭でふっと考えることが一番時間が速いですが、こういうものは淡雪のように消えることが多いので、私は必ず言葉にして録音するか書いています。

その思想のなかで、「これをやる」という実現すべきことと、「なぜそれをやるか」という実現すべき理由と、「このようにやる」という実現する方法論を明らかにしていくのです。

それが机上の空論で終わるか、現場の実論として機能するかが勝負どころですが、出した思想を次々に実現していった実績が厚ければ、その問題はクリアーできていきます。

つまり、「言ったことは全部実現する」というスタイルを築くことが大事なのです。

有言実行の精度が上がれば上がるほど、「思想の先行性」という武器を縦横無尽に使えるようになるのです

私はちなみに思想の実現力がひじょうに高いタイプだと思っております。

言ったこと、言い続けたことは、ほぼみな実現していると言ってよいでしょう。

もちろん、ものすごく大きな構想というのは、実現半ばのものもあります。

ただし、近未来のことに関しては、ほぼ言ったことを実現している実績を持っております。

でもそれは、私が特別な人間であるからではありません。

もともと、「思いは持続することで実体化する」という法則があるからなのです。

◆私に起きた実例

抽象的な言葉が続いたので、なにかたとえを出しましょう。

私はいまから九年前、ある富系のセミナーで、「内海を出て、大海に漕ぎ出しましょう」という考え方を繰り返し発信しておりました。

安全な代わりに何も起きない平凡な日常を脱して、外の世界でリスクを取ってチャレンジしましょう、という意味です。

そのセミナーは人気が出て、十回以上リピートして来る方がたくさんおりました。

私はセミナーの最後のクライマックスで、必ず「内海を出て、大海に漕ぎ出そう」ということを熱く語っておりました。

そうすると、半年後にブラジルに移住して仕事することになったのです。

万里の波濤を乗り越えて、地球の反対側にまで行くことになったわけです。

そして、仲間と一緒に三万人以上の方をセミナーに招いて、一万五千人の顧客をつくることに成功したのです。

「ほんとうに言ってると実現するんだな」と改めて実感したことでした。

不思議だったのは、ブラジルへ行く話も、海外に出るつもりもまったくなかった九年前の頃、雑誌で見たある時計がひじょうに気に入って、大枚をはたいて購入したのです。

それが、国際線のパイロットたちが愛用する、ロレックスのGMTという時計でした。

これはホーム時間を併せて、三カ国の時差時間を表示することができる優れた時計で、当時の私には何の実用性もなかったのです。

ところが、突然降って湧いたブラジル行きで、その後ひんぱんに日本と行き来するときに、ブラジルと、トランジットするアメリカと、目的地である日本と、ちょうど参加国の時差時刻を見るときに使い倒すことができたのです。

このワールドタイムの時計を買ったことが予言めいていて、とても不思議な気がしました。

とにかく、先行した思想が見事に実現した体験だったのです。

◆007の仕事術

でも、こういうことを何かギャンブルに当てるような感覚で理解していただきたくありません。

もっと小さな仕事術のレベルで、言ったことは必ず実現するという実績を積み重ねる必要があります。

別の事例を上げると、私はふと思いついてスマホにメモしたことは、ほとんどといっていいほどその日か遅くとも次の日にはやってしまいます。

ふとひらめいた考えは、帰って思想のレベルにして書いてしまいます。

「思想のレベルにする」というのは、直覚的に見えた世界を、論理的な言葉で多くの人が理解できるように書く、ということです。

あるいは、ふと浮かんだアイデアは、すぐに実現に向けて手を打ち始め、ほどなくやってのけてしまいます。

私は思いついたのにやらない、ということがもう生理的に気持ち悪くなってしまっています。

そんな自分を「007みたいだな」と思うことがあります。

やると決めたミッションは、どんなに困難があろうとも、必ず達成するという意味においてです。

まぁあまり言い過ぎると反作用があるので、ほどほどに聞いていただければと思います。

ただ申し上げたいのは、このような小さな有言実行を積み重ねたうえで、「思想の先行性」が機能するということなのです。

◆まとめ

「思想の先行性」は「有言実行の仕事術」と結びつくと、絶大な効力を発揮し始めます。

常に思想が前方をボーリングしながら、後に本体が前進していくスタイルをつくれるからです。

多数の戦闘機を搭載した空母が、どんどん前方を哨戒しながら航行していくイメージにも近いものがあります。

対して、「思想の先行性」を使えない状態というのは、搭載機を一機も持たないただの船、と言えるでしょうか。

「大きな理想と手堅い仕事が無限の富を築くのだ」と言えましょう。

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