異国からセブンイレブンを見て感じたこと

遠江(とおのえ)です。

私は2007年から2010年にかけて、ブラジルで2年半ほど滞在して仕事をしていた時期がありましたが、地球の反対側の南米にいて気づいたのは、遠く離れることで逆に日本のよさを再発見したことです。

アメリカ大陸というところは、北米でも南米でも日本を遥かに凌駕するスケールの大きさやダイナミックさがある一方、大味なところが多く、きめ細やかなところに乏しくて、そういうものに飢えていたのも事実です。

そんなブラジル体験において、日本のきめ細やかさの象徴としてよく念頭に浮かんでいたのは、自分でもちょっと意外なものでした。

それは「セブンイレブン」です。

なぜか日本の「セブンイレブン」が遥かな望郷の想いとともに、よく心に浮かんでいたのです。

いちど中心から出て、対象物を見つめることを「デ・センター」といいます。

異質な目を持つことで、逆に対象の本質が浮かび上がる智慧の出し方といえるのです。

◆なぜセブンイレブンか

いま、異国から観て感じたセブンイレブンの魅力を探求していくと、辿り着くのは「手がよくかけられている」ということです。

あれほど手がかけられたものは南米にも北米にもなかった。これが私の実感の正体です。

他にも手がかけられたものはいっぱいあるだろうに、なぜかセブンイレブンが中心的に想い浮かべられていたのには、それなりに意味があると思っています。

いま日本に帰国して六年経ち、コンビニ全盛のなかで生活してみても、3つほどあるコンビニ大手のなかで際立って「手がよくかけられている」と感じるのはセブンイレブンです。

近くに他のコンビニがあれば、たとえば新聞などどこで買っても同じものはそこで買いますが、「コンビニでも覗いてみようか」と思ったときには、少し歩いてでもセブンイレブンに足が向く自分がいます。

長い体験の中から選んでいる判断には、相当正確な根拠があると考えているのです。

それほど評価しているセブンイレブンなので、いま書庫を見てみたら、過去、折に触れて買い集めたセブンイレブン関係の本が12冊もありました。

特にセブンイレブンを研究しようと思って集中買いをしたわけではないので、この数は私的に見れば「かなり関心を持っている」レベルになります。

◆鈴木敏文

ご存知、セブンイレブンの立役者は鈴木敏文さんという叩き上げの経営者です。

この人は最初、出版取次大手の東京出版販売(トーハン)にいたのですが、独立起業を計画し、スポンサーになってもらおうとヨーカドーを訪ねたら、トップにみそめられて入社することになり、以来五十年以上そこに根を張って、いつしかトップにまで登り詰めたという経歴を持ちます。

そして41年前の1974年、豊洲にセブンイレブン第一号店をオープンするところから中心的に関わってきたわけですから、まさに筋金入りのコンビニ創業者なのです。

この人が育て上げたセブンイレブンのことを、日本から一番遠いサンパウロに居た畑違いの私は、祖国の魅力の象徴として思い浮かべていたことになります。

さて、私の捉えた鈴木商法の核心とは何でしょうか。

いま自分の実感を引っ張りだして言語化すれば、それは「徹底的なトライアンドエラーの積み重ねによる手間ひまかけたきめ細やかさ」というものになります。

「手間ひまかけたきめ細やかさ」が魅力の核心だったのです。

鈴木さんは、品揃えから、店長教育から、商品開発から、とにかく他を凌駕する熱心さで挑戦しては手直しする繰り返しをやっておられます。

その膨大な努力の結晶が、離れて見たときに、抗いがたい魅力となって現れていたのです。

具体的に言えば、私が想い浮かべていたのは、「行き届いて整備された商品棚」でした。

セブンイレブンの赤と黄色と緑のロゴと「輝く棚」が一体化して想い浮かび、「ああいうものは南米にはないなぁ」と呟いていたのでした。

それはどれか一店舗の具体的映像ではなく、総体として浮かんできた象徴的映像でした。

そして、優れたトータルイメージを人に繰り返し想わせるということは、そうとう偉大な金字塔だと思うのです。

その意味で、私は迷うことなく鈴木敏文氏を偉大な経営者だと認めます。

◆書店からの逆照射

さてこの偉大な鈴木敏文のセブンイレブンから何を学ぶか、ということです。

いまではセブンイレブンは独自開発のプライベート商品が売りになっていますが、当時私が日本的魅力の象徴として想い浮かべたのはそこではなく、「輝く棚」だったわけですから、その筋から核心を掘り当てる必要があります。

そこでちょっと角度を変えて、「同じ商品を並べているのに他より輝いて見えるもの」を他業種から探して、そちらから本質を逆照射してみたいと思います。

たとえば「流行っている書店」などが私から見て近いものに見えます。

書店も多数知っていますが、同じ本を扱っていても、明らかに陳列の違いによって店の魅力度は異なります。

やはり、流行っている書店は書棚が輝いています。

そういう書店は、常に売れ筋の本を研究して、棚に手を入れているのです。

本が常に最新のコンセプトによって並べ替えられています。

そのコンセプトの立て方にセンスの違いが現れ、結果として書店の魅力度の序列が決まってくるのです。

たとえば神田神保町の東京堂書店には、マニアックな陳列の妙がありますし、大阪梅田の紀伊国屋や東京駅前の丸善などは、やはりメジャーな光を放っています。

一方、流行っていない書店の棚は、いつ行っても同じ本が同じ所に並んでいて、カビ臭いにおいがしそうです。

「コンセプトの立て方」と「手間ひまのかけ方」で売れ行きは変わるということですね。

◆結論

その原理は、そのままセブンイレブンにも当てはまると思います。

その魅力は「智慧の鮮度がいい」と抽象化することが可能でしょう。

その背後には、経営者が「いま何が売れるか」を考え続け、統計を取り続け、リサーチし続け、判断し続けている智慧の輝きがあると思います。

実際、七年前に私が異国からひときわ輝いていたと見えたセブンイレブンは、その後、右肩上がりどころか二次曲線化して売り上げを伸ばしています。

遠い場所から岡目八目で観た評価は、意外なほど正確だといいます。

今回の分析によって、「智慧の鮮度がよくて輝いているビジネス」は長い目で見てライバルを凌駕し、大発展することがわかりました。

これは七年の歳月をかけて私が実感してきた一次情報のまとめですから、少なくとも私はこの探求によって、深い確信を得ることができました。

私も手間ひまかけて鮮度のいいビジネスをしていきたいと思います。

あなたはいかがですか。

それではまたお会いします。

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