富を生むためのパトロール法

遠江(とおのえ)です。

きょうは富を生むコンテンツをつくるための智慧についてです。

コンテンツマーケティングにおいては、みんながほしくなるコンテンツを生み出すことが大切です。

もっといえばプロたちもぜひ扱いたい(売りたい)と思うようなコンテンツであるかどうかで、成果が大きく変わります。

そのためには、コンテンツを生み出す仕込みとしての勉強が不可欠になります。

そして、単なる勉強では他と差別化が難しいときに、私が提唱するのは「パトロール法」です。

「パトロール法」というのは私の造語であり、その意味するところは「踏み込んだ勉強」ということです。

でも、それだと十分なニュアンスが伝わらないので、以下、三段階に分けて、事例も挙げながら詳しく解説します。

◆1、現地視察

「パトロール」とはまず「現地の見回り」というのが直訳でしょう。

踏み込んだ勉強をするには、まず現地を歩き回ってみることです。

何が「現地」に当たるのかはケースバイケースですが、いくつか実例を挙げてみましょう。

司馬遼太郎は歴史物を書くときに、トラックいっぱいの資料を古本屋市場から集めて、徹底的に文献研究をすることで有名です。

でも彼は、最後に現地を視察して、じかにその場に立つことを非常に重視していました。

「あの大木を龍馬も見て育ったはずだ」。

たとえばこういう現地体験を通して、主人公の心情を推察し、迫真の歴史ドラマに肉付けしていくわけです。

柘植久慶というグリーンベレー上がりの文筆家は、戦記物を書くときに、必ず現地をフィールド・ワークして、「あのときナポレオンがこう決断したのは、この地形を見たからに違いない」という具合に戦場心理を追体験していきます。

流行作家のコンテンツとは、このようなパトロールを通して付加価値が上げられているのです。

私も地方にセミナーに行くときは、その土地の歴史や著名人を事前に調べ、現地に早めに着いて、名所形跡を実際にパトロールします。

そこで肌で感じたことが、なにかその日のセミナーにワンプラス、付加価値を足すことが極めて多いのです。

たとえば呉にセミナーで行ったとき、事前に歴史を勉強すれば、当然、戦艦大和を建造した海軍工廠(こうしょう)のことが出てまいります。

そこで、当日早朝から(戦艦)大和ミュージアムを訪れて、百分の一スケールの大和の巨大模型の周りを何度も回りました。

さらに昔、工廠があったはずの波止場に出て、大和が70年前に出陣した海を眺めてみました。

また帰り道に海上自衛隊呉史料館で実物の潜水艦の中にも入ってみて、海軍の今昔を確かめてもみたのです。

そうしたあとでセミナー会場の演台に立ち、冒頭で大和の話をしたとき、受講者のみなさんが深く感激してくれた記憶があります。

単なる勉強で終わらずに、現地視察のパトロールを加えると、コンテンツの付加価値が上がるのは確かなのです。

◆2、実際にやってみる

さらに「パトロール」には、次なる意味として、勉強していいと思ったことは実際にやってみる、ということがあります。

勉強した内容の実践ですね。

世の中には、「聞いているのとやってみるのでは大違い」ということがたくさんあります。

単に知っているだけでは決してわからないことが、実践してみるとわかってくるし、そういう経験を通した智慧には大きな付加価値がつきます。

昔、20代の頃、リクルートという会社で高速デジタル回線を大手企業に営業する仕事をしていたときのことです。

わかりやすく言えば、「当社の専用線を引いてもらえば、御社の社内電話料金をぐっと削減できますよ」という営業をしていました。

そのときたしか何かの営業勉強会で、「テレカウンター」という、かけた通話量を測れる器械があることを教えられたのです。

何百人もいる営業マンがみなそれを聞きましたが、「じゃあ営業している会社に付けさせてもらおう」と動いたのはほぼ私一人でした。

そして一定期間測った上で、「この通話量ならうちの専用線を引いてもらえば年間何百万円の経費削減ができますよ」という企画書をつくって営業したら、バンバン売れ始めたのです。

その結果、私は新人にして二期連続で営業MVPを獲得することができました。

営業の強さで定評のあるリクルート社で、そのなかでも選りすぐりが選抜された最強の部門で、新人が二期連続トップを取ったのです。

その成功体験を先輩諸氏の前で発表すると、大反響が起こり、
すぐにテレカウンターが大増強されて何百台となり、そのための技術陣も増員されて、
私のつくった「テレカン受注」(テレカウンターを付けての営業)という言葉が社内で人口に膾炙(かいしゃ)することとなりました。

勉強会で「なるほど」と思ったことを、実際にやってみたら巨大な金鉱を掘り当てて、大きな富を引き寄せたのです。

単なる勉強で終わらずに、実際にやってみるということを加えると、コンテンツ(この場合は私の話)の付加価値はものすごくはねあがるという一例です。

◆3、仮説検証

さらにさらに「パトロール」には、まだ誰も行ったことのない道を、仮説検証を繰り返しながら掘り進む、という段階があります。

これはほんとうに「やってみないとわからない」世界のことです。

偉大な発明家たちはみなこの「パトロール」に命を賭けて、人類に貢献しようとがんばっています。

たとえば、小保方晴子さんの「スタップ細胞」もここに位置すると私は思っています。

いま現在(2015年10月)、へんなところからケチがついて彼女は不遇の中に置かれています。

しかし夢の再生医療を可能とし、生命の神秘にまで迫った彼女の仮説検証の研究は、文字通り生死を賭けた偉大な「パトロール」だと私は思っております。

◆旅に出よう

こちらはささやかな私自身の事例ですが、「旅をするとアイデアがひらめく」という仮説を検証するために、休日を使って二泊程度のあてどない旅を繰り返したことがありました。

旅に出ようと車を走らせると、見慣れた町の風景が、まったく非日常なものに変わり、自分でも驚くほどアイデアがバンバン出てくるのを体験しました。

それで、「アイデアの発想」をテーマにした宿泊型のセミナーのなかで受講者に同じような体験をしてもらおうと、2日目の早朝、研修所からバスに乗せて擬似的な旅をさせる、という企画を実際にやったことがあります。

ここでの肝は、あてどない一人旅で起きたアイデア増強状態が、はたして多人数の宿泊セミナーで起こせるのか、ということでした。

私はセミナー開発のパトロールで仲間の協力を得て仮説検証を繰り返しました。

そして、5時台の早朝には非日常な神秘的空気が流れていること、耳から入る言葉に非日常性を加えると、相乗効果でかなり「あてどない一人旅感覚」に各人を入れることが可能なことなどを次々発見していったのです。

そして、同僚にバスの運転手をしてもらい、私がバスガイド役を買って出て、早朝の並木道から山上の湖畔ホテルまで、絶景のポイントを縫うようにして、非日常性たっぷりなバス旅行をコンテンツに加えたのです。

その結果、「生涯忘れえぬ経験をした」という感動が相次ぎ、高額セミナーとしては異例の大ヒット・ロングセラーとなって、大きな成果を上げることができました。

そのバス旅行のなかで受講生が次々、独創的なアイデアを出し始めました。

あるスランプに悩む大手旅行会社の企画課長さんは、そこで得たアイデアを商品化したら起死回生の大ヒットとなって、その年の社長賞を取り、日経新聞に記事として扱われる大成功をおさめました。

「大人数のセミナーでも旅体験をさせてアイデア増強できるかもしれない」という仮説が検証された一例です。

未知の世界を仮説検証を繰り返しながら進む「パトロール」は、当たればダイヤモンドの鉱脈を発見することもあると思います。

◆まとめ

このように、単なる勉強にとどまらず「パトロール」にまで踏み込むことで、コンテンツは飛躍的に価値を増す可能性があります。

勉強する内容は平凡でも、自分なりの「パトロール」を通して、非凡なものに昇華することができるのです。

そして、このパトロールは、「現地を歩いてみる」「実際にやってみる」「仮説検証を繰り返す」という3つのパターンで実践することができると私は考えます。

コンテンツの数が増えたいま、単なる勉強だけで差別化するのは難しいでしょう。

みんながやっていることからもう一歩踏み込み、さらに踏み込み、できたらもういっちょう踏み込む精神が、自分もおもしろいし、相手も喜んでくれる、そういう道を拓くのではないでしょうか。

何かの参考になれば幸いです。

ではまた。

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